伝えたい番組内容に視聴率が取れる要素をプラスすることが大事
テレビ業界と聞いて、あなたは何をイメージするでしょうか?
「華やかで楽しそう」とポジティブなイメージを持っている人から「上下関係が厳しくて仕事がきつそう」とネガティブなイメージを持っている人まで、たくさんの意見があると思います。
テレビ業界は知られているようで、あまり知られていない業界です。「知る、知らない」という表現より「正しく伝わる、伝わっていない」という表現のほうが適切かもしれません。
テレビ業界という言葉が「閉鎖的で特別なイメージ」を与え、そのイメージが浸透してしまったことが「テレビ業界」が一人歩きしている大きな原因です。
だからこそ、テレビ業界で働くことを目指している未来のテレビマン、そして、テレビ番組を愛する視聴者の皆さんに、テレビ業界の本来の姿を感じてもらいたいと思っています。
広告収入に頼ってきた民放、国民の視聴料に頼ってきたNHK。長引く不況と新興メディアの台頭でテレビ業界はかつての勢いをなくしています。「最近のテレビ(番組)はつまらねえよ」と耳が痛くなる言葉を聞く機会も増えました。
番組予算が削減され、視聴率ありきの番組作りが増えていることも事実です。ただ、テレビ業界で働く以上、視聴率から逃げることはできません。
特に民放で働く場合は視聴率が会社の業績に大きな影響を及ぼします。テレビ業界で働きたいなら、何を言われても、視聴率から逃げてはいけないのです。
番組作りには「局員」、NHKの場合は「職員」と呼ばれる正社員のほかに、たくさんのスタッフが関わっています。番組単位で契約をしているスタッフも大勢います。
もし番組が打ち切りになれば、番組単位で契約をしているスタッフは仕事を失ってしまうわけです。
「ディレクターなら視聴率から絶対に逃げるな」
AD時代に言われた言葉です。テレビ番組のジャンルは様々ですが、バラエティ番組であれ、ニュース番組であれ、ドラマであれ、数字(視聴率)が悪ければ、打ち切りが待っています。
自分が担当していた番組が初めて打ち切りになった日のことは、10年以上経過した今も忘れられません。今まで一緒に働いた仲間と別れ、それぞれが別の番組を担当することになりました。
1年365日の中で、その日が来ると「打ち切りになった日だなあ」と毎年思い出します。
テレビ業界で働きたいと考えている未来のテレビマンの皆さん。自分のやりたい企画が実現できて、なおかつ視聴率が取れる番組を目指してください。
みんなで大笑いできる番組でも、日本の将来に警鐘を鳴らす番組でも、日本のすばらしい文化を再発見できる番組でも、どんな内容でもいいんです。
自分が伝えたいことに数字を乗せるため、取り組んでいる企画と本気で向き合いましょう。
テレビ番組がおもしろいか、おもしろくないかを左右することができるのは、テレビ業界で働いているテレビマンだけなのですから。
「好き」も大事だけど、「仕事として続けられるか」がもっと大事
テレビ業界で働くことは決して難しいことではありません。
もちろん、キー局で働くことやNHKの職員として働くことは狭き門です。しかし、「テレビ番組に関わる」という広い意味でとらえるなら、テレビ業界で働くことは決して難しいことではありません。
ここからは、個人的な意見ですが、テレビ業界で働くために最も必要なことは「テレビが好き」という気持ちではありません。「テレビ番組作りを仕事として続けられるかどうか」です。
ほかの業界と同じように、楽しいこともあれば、辛いこともあります。
番組制作に限れば、体力と精神的なタフネスがなければ長続きしないと思います。
「テレビが好き」という漠然とした理由だけでは、いずれ体調を壊すか、精神的にまいってしまい、テレビ業界を去ることになってしまうでしょう。
アイデアはもちろん、スピードが要求される仕事です。
人間関係を円滑にするためのコミュニティ能力が求められる仕事です。
そして、体力とメンタルの強さが求められる仕事です。
理想だけでなく、数字が求められる仕事です。
テレビ業界に入って、仕事の楽しさを見つけられるかどうかは、あなた次第。ほかの業界と何も変わりません。
ひとつだけ確かなことは、自分から積極的に仕事の楽しもうとする人にとって、大きなやりがいと可能性が広がっている世界ですよ。